マイナス票についてまとめてみる
この記事の最後で述べた、選挙におけるマイナス票についてまとめてみた。
中世のヴェネツィア共和国では、選挙でマイナス票を投じることができた。
どういう仕組みになっていたかと言うと、こういう感じ。
普通、選挙というのは当選させたい人に一票を入れるものだが、ヴェネツィア共和国では、落選さえたい人に一票入れることもできた。
例として、定数3で、立候補者が5名の選挙があるとする。なお、わかりやすくするために選挙権を持っている人は100人とする。
A、B、C、D、Eの5名の候補者がいて、それぞれの得票が下記の通りであると
普通の選挙であれば、A候補、B候補、C候補の3名が当選する。
だが、ヴェネツィア共和国ではプラス票だけではなくマイナス票もあった。一票を当選させたい候補者へのプラス票として使用するか、落選さえたい候補者へのマイナス票として使用するかを有権者が選べたのである。
仮に「どうしてもC候補を落選させたい」という思いを抱いている人がたくさんいたとして、プラス票しか投票できない場合は、「C候補のライバルになりそうなE候補に投票する」、あるいは、「消去法で一番マシなA候補に投票する」という選択をすることとなる。
ところが、マイナス票が可能となるとこうなる。
100人の有権者がそれぞれ、下図のような投票をしたとする。
まず、プラス票よりマイナス票が多いC候補が外れる。「C候補を落選させたい」という想いはここで結実する。
その上で、プラス票の多い候補から3名が当選する。
重要なのは、プラスマイナスの合計で決めるのではなく、合計がプラスになる候補者の中からプラス票の多い順に当選者を決めるのである。
例としてプラス票とマイナス票の釣り合いを考えた表にしたが、実際のヴェネツィア共和国の選挙ではこのようなことがあった。
マイナス票があまりにも多く、
合計するとマイナスになる候補者を除外すると、定数を割り込んだのである。
こうなると、候補者の選定からやり直しとなった。