徳薙零己の備忘録

徳薙零己の思いついたことのうち、長めのコラムになりそうなことはここで

ACL決勝を振り返ってみた

2017年11月25日、浦和レッズは10年ぶり2度目のAFCチャンピオンズリーグ(以下「ACL」)優勝クラブとなった。

ACL優勝は10年前に経験しているとは言え、2017年11月25日のACL勝戦はそれまでに体験したどの試合とも違う特別なものだった。

ここで備忘録的に、ACL決勝はどのような光景であったのかを思い出しつつ書いてみる。

 

何が特別だったのか

どんな大会であれ、決勝戦というのは特別な試合だ。ルヴァンカップ(かつてのヤマザキナビスコカップ)の決勝戦も、天皇杯の決勝戦も、勝てば優勝という特別な事情があり、ただの試合ではない特別な試合とさせている。

それらの決勝戦ACLの決勝戦との違いは、主催がアジアサッカー連盟AFC)であるということ。ACLは、準決勝までは各クラブが試合を主催し、選手紹介も場内アナウンスもいつもの通りであるが、決勝戦だけはACL決勝だけでしか体験できない特別なものとなる。 これはルヴァンカップ天皇杯の決勝でも同じ。

<準決勝の選手紹介>

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<決勝戦の選手紹介>

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試合前にピッチレベルで行われるイベントもACL決勝の特別なものとなる。

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場内アナウンスは基本的に英語。

トロフィーを場内に運び込むのはその国の伝説的なフットボールプレイヤーで、2017年のACL決勝第2戦の場合はカズこと三浦知良氏がその役割を果たした。

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ちなみに、サウジアラビアで開催されたACL決勝第1戦では、21年間の現役生活をアルヒラル一筋で過ごし、350試合に出場して183得点、サウジアラビア代表として81試合に出場して20得点という、アルヒラルの英雄ユセフ・アル・トゥナヤン氏がつとめた。

 

サポーター

AFC主催ということでもACL決勝は試合そのものが特別であるが、試合前のサポーターの意気込みもまた特別になる。

まず、入場券が手に入らない。販売開始初日に売りきれるというだけならまだいい。販売開始から数秒で売り切れるのである。もっとも、その後で待っているのは転売。定価の倍ですら安値というのが転売屋のつけた相場である。ただし、転売屋はバカだが、サポーターはバカではない。転売屋の手に流れた入場券は取引が成立せずに終わった。

無事に入場券を手に入れたサポーターは、スタジアムまでの見慣れた道が今までと違うことに気づかされる。

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 入場した後で待っているのは、これまでに感じたことのない圧迫感。

寒くなってきているので着込む量が多く、同じ人数であっても密度が詰まっているように感じるというのもあるが、スタジアム全体の雰囲気そのものが決勝のプレッシャーから重苦しくなっている。猛烈なストレスを感じるだけでなく、息苦しさも感じる。

 

各人の座席にはビニールが置かれている。これで「ああ、今日はビジュアル(=コレオグラフィー)をやるんだな」という感情を抱く。この時点で自分たちが生み出すビジュアルがどのようなものになるのかを知る者は少ない。おそらく、全体で100名もいないであろう。ちなみに、これは浦和レッズだけかもしれないが、クラブ関係者はビジュアルをやることは知っていてもどのようなビジュアルであるかは知らない。そもそも、クラブ関係者はビジュアルにまったく関与せず、全てサポーター有志のボランティアである。

どのようなビジュアルになるのかを知らないまま、タイミングが来たらビニールを掲げる。事前練習無しの5万人のぶっつけ本番である。前述の通りクラブ関係者がビジュアルに関与していないので、ビニールを掲げるタイミングが場内アナウンスで流れることもなければ、クラブの公式SNSアカウントで呼びかけるということもない。どのタイミングで掲げるかもサポーター有志のボランティアの呼びかけである。

その呼びかけの結果、このようなビジュアルができあがる。が、掲げている本人はどのようなビジュアルになっているのか知らない。知るのはスタジアム内のビジョンに映し出されてからである。

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繰り返すが、ACL決勝の主催はAFCである。

試合進行もAFCであり、試合開始もAFC主催のためなのかこうなる。

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試合 

試合が始まったら、そこから先は浦和レッズのいつもの試合である。選手はもちろんいつものサッカーという姿勢であろうとしたであろうが、観ている側にとっても、浦和のユニフォームを着た選手が浦和のサッカーをしているという点で普段と違いは無い。

ただし、二点の違いがある。

一つはサポーターの声援。人数が多いので声援も多くなる。

もう一つは、試合中も消えることのない圧迫感。観ているだけでも激しいプレッシャーに潰されてしまうように感じる。選手が、ではなく、観客が、である。自分でも激しい動悸に襲われ、息苦しさを感じる。

なお、入場者数が多いことから想像できていたとおり、ハーフタイム時のトイレの行列や売店の混雑はいつも以上であったが、入場者数の多さ自体は何度か経験しているので特に驚きはない。

 

そのとき

前半を0対0で折り返し、後半も膠着した状態が続いていたが、観客席には何かが起こりそうな雰囲気が漂っていた。

その何かが起こったのは、87分(後半43分)。決勝点となる得点が生まれたとき、スタジアムが揺れた。テレビで観ているだけでは感じないであろう揺れが、スタジアムに詰めかけていた全ての人に襲いかかった。

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試合終了の瞬間の歓喜は、どの優勝でも同じである。違うのは試合後のセレモニーが英語であるということぐらい。

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終わりに

2018年シーズン、浦和レッズACLに臨むことはできない。ACLに出場できるのはJ1で3位以内に入ったクラブ、そして、天皇杯で優勝したクラブだけである。浦和レッズはそのどちらでもない。

2018年シーズンのACLに日本を代表して臨むこととなる川崎フロンターレ鹿島アントラーズセレッソ大阪柏レイソルの四クラブのどこかが、ACL決勝の雰囲気を再現することになると信じている。ACLのトロフィーが日本にあり続け、浦和レッズが果たせなかった国外でのクラブワールドカップ準決勝進出を達成してくれると信じている。