徳薙零己の備忘録

徳薙零己の思いついたことのうち、長めのコラムになりそうなことはここで

失敗からの克服について考えてみた

人間は誰しも失敗するものです。失敗しないということは存在し得ず、仮に失敗が存在しないとすれば、それは失敗しないのではなく失敗を隠していることに成功しているだけなのです。

失敗は損失を生むだけでなく、人生を破滅に導き、ときに命に関わる問題を引き起こします。だからこそ失敗は恐れるべき存在なのですが、どのようにすれば失敗を未然に防ぎ、失敗を克服できるのでしょうか?

 

その答えは一様ではありません。しかし、ある程度のパターンは見られます。

少なくとも、失敗からの克服をする仕組みは以下のパターンを包括しています。

 

1.失敗した当事者に関わらせない

失敗した当事者に対して「なぜ失敗したのか」などと問い合わせるのはメリットが全くありませんが、これはよく見られます。最悪なパターンとなると、失敗した当事者を会議に呼び出して質問攻めにし、書面にして書き起こすよう命じることがあります。

なぜ失敗した当事者を追い詰め、さらに仕事を増やさせるのでしょうか? 失敗した理由は様々なれど、失敗した人に共通していることが一つだけあります。それは、失敗した人に余裕はもう存在しなくなっていること。元々余裕が無いために失敗したという人もいますし、失敗したという事実に直面して余裕を失っている人もいます。そのどちらも、余裕を持っていないということでは共通しています。

その上でなぜ、失敗した当事者にさらに仕事を増やさせるのでしょうか? 余裕を失っている人にさらに負荷を背負わせて何をさせようと言うでしょうか? 失敗したことの責任を取らせるなどと、あるいは教育のためだなどと考える人がいるかもしれませんが、それは制裁にはなっても教育にはなりませんし、それ以前に、そんなもの失敗からの克服には何の役にも立ちません。

さらに、当事者を失敗の克服に関わらせると、当事者であるがゆえのバイアスがかかります。意識的にせよ無意識にせよ自らの行動を隠し、あるいは矮小化し、場合によっては拡大化させます。そもそも、自分のことを客観的に捉えることのできる人はいません。しかし、失敗の克服のために必要なのは、どのような失敗が起こったかという客観的な事実なのです。当事者が関わるということは客観的な事実からむしろ遠ざかることになるのです。

事件や事故が起こったときに第三者委員会が設置されたというニュースを聞いたことのある人は多いでしょうけど、この第三者委員会というシステムは当事者を関わらせないための仕組みです。

 

2.失敗の原因を突き止める

なぜ失敗したのかという原因を突き止めなければ同じ失敗を繰り返すこととなります。

ただし、前述の通り、原因追及のために当事者に関わらせることは認められません。あくまでも第三者が、起こった失敗は何であるかを見つけ、その失敗はどうして発生したのかを検出することが重要です。

ここで注意しなければならないのは、失敗の原因は本人の気の緩みなどという精神論で片付けてしまうことです。そんなものは失敗の原因でも何でもありません。気の緩みで起こる失敗などありません。仮にそのようなものが存在するとすれば、気の緩みで失敗が起きてしまうようなシステムのほうに問題があります。

失敗の原因に人間の意識など一切依存しません。ましてや、気をつけるなどと言うレベルで解決するものではありません。どのような心境であろうと起こってしまうところに原因の本質があります。

原因が見つかれば、その原因を無くせば失敗を繰り返すことが無くなることを意味します。失敗があることを前提としたシステムでは、いつでも客観的な原因究明ができる仕組みを整えています。飛行機におけるブラックボックスはそのいい例といえるでしょう。

 

3.失敗の原因が起こせない仕組みを作る

失敗の原因を突き止めたら、今度は原因を起こさせない仕組み作りです。

ここで重要なのは、強引に原因を消すことです。間違えても「気をつける」などと本人の意識に依存させたり、「複数人でチェックする」などと仕事を増やして原因を起こさせない仕組みとできたと思ったとすれば、信じられないレベルの脳天気さです。

失敗の原因を強引に起こさせない仕組みとは、人間が意識しなくても勝手に原因が消えている仕組みのことです。機械的に失敗できなくなっていたり、失敗の原因となる部品を必要としない仕組みを作り上げたりと、意識して失敗させようとしない限り失敗が起こらない仕組みを作り上げることです。

失敗の原因を起こせない仕組みの出来の指標は、失敗が起こる前より人間のこなす仕事量が減っているかどうかです。失敗したくてもできない仕組みを作り上げ、その上で、人間のこなす仕事量が減ってはじめて、失敗の原因を起こせない仕組みは完成したと評価に値します。

失敗の原因を起こさせない仕組みを作ったせいで人間のこなすべき仕事が増えることがあるかもしれませんが、そのときは、増えた以上の仕事を減らせるようになっている必要があります。一つ増えたら二つ減り、二つ増えたら四つ減りと、最低でも、増えた仕事より減った仕事のほうが二倍は存在しないと意味がありません。

 

失敗の克服に失敗するパターン

失敗の克服に失敗するパターンとは、上記の裏返しです。

失敗した当事者に、失敗の原因を追及させ、失敗の原因は本人の意識の問題にあるとし、失敗を防ぐために仕事を増やす。よく見られる光景ですが、そのような光景を展開している環境では、失敗の克服どころか失敗の再発を繰り返すだけです。

 

 

失敗の克服のまとめ

失敗したとき、二度と失敗しないよう克服するためには

○第三者

○精神論では無い原因を見つけ

○失敗の原因を起こせない仕組みを作り

○以前より仕事が減る

という手順が必要なのです。