徳薙零己の備忘録

徳薙零己の思いついたことのうち、長めのコラムになりそうなことはここで

埼玉スタジアムでACL決勝の開催を求める声についてまとめてみる

2022年8月25日でのAFCチャンピオンズリーグ(以下「ACL」)準決勝に勝利したことで浦和レッズACL決勝に駒を進めた。ACL決勝はホーム&アウェイで開催することが決まっており、浦和レッズは決勝第2戦をホームスタジアムで開催できる権利を手にした。

そして、一つの問題が露呈した。

ACL決勝をホームである埼玉スタジアム2○○2(以下「埼玉スタジアム」)で開催できない可能性があるという問題である。

浦和レッズサポーターはどうにかしてACL決勝を埼玉スタジアムで開催できないかと模索し、署名活動を続けている。しかし、署名そのものは数多くの賛同を得てはいるものの、埼玉スタジアム保有する埼玉県において署名活動に対する反応は鈍いとするしかない。

いったい何が起こっているのか?

 

問題の経緯

そもそも埼玉スタジアムは芝の全面張り替え工事を2021年末から2022年初頭にかけて実施することが決まっていた。浦和レッズサポーターもそのことは承知しており、令和4(2022)年初頭は埼玉スタジアムが使えなくなることも当然のこととして受け入れていた。

ところがここで横槍が入った。2021年9月2日に市立吹田サッカースタジアムで開催されたカタールW杯最終予選の第1戦であるオマーン代表との試合を0対1で敗れたことから、「縁起が良い」という名目でサッカー日本代表埼玉スタジアムで開催して欲しいという要望が日本サッカー協会から埼玉県に寄せられ、埼玉県は日本サッカー協会の要望に応えて埼玉スタジアムの工事を1年間延期することが決まった。

www.jiji.com

 

この横槍に対する浦和レッズサポーターからの反応は反発であり、受け入れられないものとする声が多数挙がっていたが、日本サッカー協会からの要望に埼玉県議会議員も応えたことで埼玉県は工事の1年延期を決定した。既に芝の張り替えは必須であることが判明しているにもかかわらず「縁起が良い」というだけの理由で延期が決まったのである。さらに問題となったのが、日本サッカー協会からの工事延期の要望があったにもかかわらず、工事延期に伴う追加費用の負担は埼玉県の税金からの支出であったという点である。既にこの段階で浦和レッズサポーターからだけでなく埼玉県民からの反発が強くなっていたが、日本代表の縁起担ぎという理由だけで工事延期は強行され、埼玉スタジアムをホームとする浦和レッズは、2022年シーズンは芝張り替えが延期されたままのピッチをホームスタジアムとして試合することが強要された。その結果が、ケガ人続出のシーズンである。ACLの決勝には進むことができたが、それ以外は満足いく内容ではなく一度としてフルメンバーが揃うことはないままのシーズンとなった。

また、ACL決勝のスケジュールは当初、2022年内に完了するというものであった。しかし、2022年1月に2022年度のACLの日程が変更となったことが公表された。決勝が翌年2月に延期となるというものである。

www.soccer-king.jp

この瞬間、強行された工事延期の影響でACL決勝を埼玉スタジアムで開催できないという危惧が発生し、浦和レッズACL決勝に進出したことで危惧が現実化し、浦和レッズサポーターからの反発が生まれた。

単に工事と重なったから反発しているのではなく、サポーターの民意も県民の民意も無視して、日本サッカー協会からの横槍のせいで強行された工事延期の影響でACL決勝が埼玉スタジアムで開催できなくなりそうだから反発しているのである。浦和レッズサポーターは何も無茶を言っているのではない。被害を受けたせいでさらなる被害を受けているという二重苦を突きつけられていることの反発が浦和レッズサポーターを動かしているのが現状である。この反発は当然のこととするしかない。

 

反発に対する返答

当然ながら、浦和レッズサポーターが署名活動をし、数多くの署名が集まっていることは埼玉県にも届いている。しかし、埼玉県からの解答は以下の通りである。(以下は浦和レッズオフィシャルホームページからの転載)

 

(1) 芝生育成業者には別の業務を請け負う予定があり、圃場利用の再延長ができません。
現在予定の工事期間でなければ、育成した芝生が使用できず、改めて2年間かけて芝生を育成しなければなりません。仮に工事期間を変更する場合、芝生張替え工事は順調に契約ができた場合でも、令和6年11月着手となります。現在の芝生の状態で2年継続して使用すれば、地温コントロールシステムの老朽化がさらに進み、芝生のコンディション低下により、浦和レッズ及び対戦チームの選手には、これに伴うリスクが生じる可能性や会場の使用が困難に陥る可能性があります。

(2) 芝生張替え業者は、本年11月からの工事着手に向け、資機材や作業員の手配が概ね7割程度完了しており、現時点での工事期間の変更は業者に多大な損害を与えるとともに、同時に実施する観客席や機械設備等の他工事にも同様の影響があります。

2 工事期間を変更するためには、新たに発生する芝生の2年間の育苗費用(約1億5千万円)が必要となります。また、既発注の芝生張替え工事(約2億9千万円)及び使用中の芝生の県立高校での利活用工事(約1千2百万円)の契約解除に伴う損害賠償費用、同時期に実施する観客席、機械設備等の工事(約5億7千万円)の中断に伴う損害賠償費用が発生します。

3 御要望のとおり工事期間を変更する場合、貴社には、上記1のリスクに対応いただくとともに、上記2の経費を請求させていただくこととなります。

www.urawa-reds.co.jp

なお、埼玉県が提示している予算はもっと低い金額であることは注記しておく。

www.pref.saitama.lg.jp

現時点での埼玉県からの解答の中に、ACL決勝を埼玉スタジアムで開催するという選択肢は無い。埼玉スタジアムサッカー日本代表の試合を開催するよう持ちかけた埼玉県議会議員からの返答は一応存在するものの、そこには自らの責任を認識する記載が皆無であった。

 

埼玉県が果たすべき対応策

まず、日本サッカー協会が工事延期を要請してきたこと、批判されていた工事延期を強行したのは埼玉県の側であることを認識すべきである。ACL決勝を埼玉スタジアムで開催するために工事をさらに延期するとなった場合に経費を請求するとあるが、今回の場合は埼玉県が加害者であり浦和レッズが被害者である。埼玉県からの解答は埼玉県のやらかした犯罪の後始末を犯罪被害者に押しつけるというものであり、埼玉県からの解答は言語道断とするしかない。

埼玉県が示すべき解答は、工事の再延期が必要となった場合は埼玉県が全ての費用を負担した上で工事すると示すべきであり、ここに日本サッカー協会が費用の部分負担を引き受けるならばまだ認められるが、浦和レッズに対する費用の追加負担を求めるという選択肢は無い。

また、莫大な経済効果が見込まれるACL決勝を他の都道府県で開催させるとなったならばそれこそ莫大な損失である。ACL決勝開催で地元への経済効果は最低でも20億円と見込まれており、工事延期に伴うACL決勝の埼玉スタジアム以外での開催は埼玉県に対する莫大な収入機会損失を意味する。

埼玉県は何としても埼玉スタジアムでのACL決勝開催を、埼玉県の責任で実現させる責任がある。

日本サッカー協会が果たすべき対応策

既に動き出しているが、日本サッカー脅威会は2023年2月から2023年5月へとACL決勝のスケジュールを見直すようアジアサッカー連盟に訴えている。これは次善の策として許容できるものである。そもそも今回の問題の発端は日本サッカー協会の難癖のせいである。

また、スケジュール延期は公平を期すという点でも理由付け可能な選択肢である。ACLのノックアウトステージはアジアを東西に分けてそれぞれで開催するというスケジュールであるが、東地区は2022年8月に準決勝まで開催した後に決勝まで半年間の空白が空くのに対し、西地区は2023年2月にノックアウトステージの準決勝までを終え、ただちに決勝戦を開催するというスケジュールになっている。西地区は実戦を積み重ねることでイレブンの戦術浸透が進む一方で連戦となる。決勝を迎えたときの疲労は並々ならぬものがあるだろう。一方、東地区は、すなわち浦和レッズ疲労状態だけを考えれば恵まれると言える。ただし、2022年度の全公式戦を終えてから3ヶ月近く実戦から離れるために戦術浸透度に難が生じることとなる。

ここで仮に2023年5月のACL決勝開催となれば、東地区も西地区も公平な状況でACL決勝を迎えることが可能となる。

 

その上で考えられるより現実的な解決策

埼玉スタジアムの芝の張り替えは、実は埼玉スタジアムメインピッチだけの張り替えではない。メインピッチに加え、埼玉スタジアム第2グラウンドの張り替えも同時に実施するというスケジュールになっている。

そして、埼玉スタジアムは天然芝の第3グラウンドと人工芝の第4グラウンドも存在する。

そこで、ACL決勝があくまでも2023年2月開催ということであれば、埼玉スタジアムメインピッチの芝は来年のメインピッチに敷く前提の芝を第3グラウンドで養生し、ACL決勝が終わり次第、第3グラウンドで養生していた芝をメインピッチに移設するという方法がある。

既に埼玉県の提示した工事予定にもあるが、埼玉スタジアムの芝の張り替えに合わせて観客席や機械設備の改修などの施設工事も実施するとある。この工事もACL決勝終了後からの工事とする。

仮に立ててみたマスタースケジュールだと以下の通りとなる。

ACL決勝を埼玉スタジアムで開催できる代わりに2023年3月から6月までの17週間に亘って埼玉スタジアムが利用できないこととなり、例年通りであればその間に多くて10試合、J1で7試合、ルヴァンで3試合のホームスタジアムが開催できないこととなるが、それでもACL決勝を埼玉スタジアムで開催できなくなるよりはまだマシである。

さらにこの10試合のホームスタジアムの開催を、駒場6試合(J1:4試合、ルヴァン2試合)、国立2試合(J1:2試合、うち1試合、あるいは2試合ともフライデーナイトマッチ)、熊谷2試合(J1:1試合、ルヴァン1試合)とすることで、国立開催による県外のサポーターの来場を促し、これまで主催試合開催実績のない熊谷での開催をすることで新たな県内のサポーター獲得が図れるようになる。ここで重要なのは、ACL決勝という特別な舞台として国立を利用するのでなく、あくまでもJ1リーグ戦の試合として国立で開催することで通常の浦和レッズの姿、浦和サポーターの姿を見せることで新規顧客を獲得することである。また、埼玉県のクラブということで浦和を応援してくれているが、埼玉スタジアムが遠いために簡単に見に行くことができないでいる人が、熊谷だったら観に行けるだろうと考えて熊谷まで足を運んでもらうことである。

さらに、駒場開催のタイミングをWe.リーグと合わせることで、We.リーグの試合を観たあとでJリーグの試合を観る、あるいはその逆で、Jリーグの試合を観たあとでWe.リーグを観るという観客を増やすことは、JとWe.の相乗効果を期待できる。

その上で、工事完了後の埼玉スタジアムで2023年度の残りの試合を開催する。ここで来場してくれるのは既存顧客だけでなく、埼玉スタジアム工事中に獲得した新規顧客である。

 

以上は全て私的なアイデアであり、批判や反論が多々生まれるであろうアイデアであることは承知している。

その上で、いかにすれば埼玉スタジアムACL決勝を開催できるかのアイデアを数多くの方が挙げてくれることを期待する。