お金と安全について考えてみる
これの続きです。
ヤップ島の石の貨幣は、とても価値のある貨幣です。
大きな石の貨幣ですと家一軒を買えるほどの価値があります。
にもかかわらず、野ざらしなことも当たり前です。
それどころか、船に積んで運んでいる途中に船が沈んでしまい、海の底に沈んでしまったものもあります。
それなのに、誰も勝手に持って行きません。つまり、盗まれません。
なぜでしょう?
答えは簡単で、誰が持ち主か島の誰もが知っているから。
勝手にこの石の貨幣を持って行って何かを買おうとするとしましょう。
結果は惨たるものです。誰も売ってくれません。石の貨幣の持ち主は誰なのか知っているわけですから、持ち主でない人が持ってきて貨幣を使おうとしても使えないわけです。
さらに、石の持ち主が買い物をしようとしても用途は限られます。家一軒の価値がありますから家との交換なら問題ないと思われます。あるいは、漁業に使う船との交換でも問題ないと思われます。また、命懸けで自分を助けてくれた人に対しての感謝の気持ちとしても問題ないと扱われます。
しかし、その価値はないと扱われた取引は認められません。「そんな安物との交換で石を手に入れるなど許されない」となると、取引は中止させられます。
石の貨幣を使うのに必要なのは、正当な持ち主であるという認識、そして、等価交換であるという認識です。こうなると、盗むだけでなく、不正な取引もできなくなるわけです。
さて、この石の貨幣のセキュリティに相当する仕組みは現在、真剣に検討されています。ビットコインに利用されているブロックチェーンもそうですし、前回書いたクレジット会社の手がけるデビットカードもそうです。
そのどちらも、誰が、いつ、どこで、どのような理由でいくらの取引をしたのかが全て記録される仕組みなわけですが、ここに、不正な取引を監視する仕組みを投じたらどうなるでしょう?
犯罪を激減させることができます。
また、取引に関わる監視が働いて脱税もできなくなります。
監視されるということに危惧を感じる人もいるでしょうが、代わりに安全と財政の改善を手にすることとなるのです。
これが、高額紙幣を廃止すると同時に取引を透明化するということです。
自分の金が盗まれるかもしれないという心配と、自分の金の使い道が監視されるという心配とを天秤に掛ける時代が来たということを受け入れる必要があるのかもしれません。
まだうまくまとめきれていませんが 、たぶん、この続きは別途。
将来のお金の姿について考えてみる
お金というと、紙幣だったり、あるいは硬貨を思い浮かべる。
どちらも財布から取り出してレジに出すというイメージが伴う。
ところが、現金を使うことが減ってきている。
Suicaやpasmo、あるいはWAONといった電子マネーで買い物をすることが多くなってきているし、クレジットカードでの支払いも増えてきている。
さらにはここに、デビットカードが加わった。厳密に言えばデビットカード自体は昔から存在していたのだが、クレジットカード会社と連携したデビットカードが出てきた。
デビットカードで買い物をすると、買った瞬間に口座の残高から引かれる。使えるのは銀行口座の残高分までだ。ゆえに、使いすぎることもない。実際には定期預金との総合口座の場合は、定期預金の預入額の90%、あるいは200万円を上限とした自動貸出機能もあるが、それでも預金残高以上を使い込むというわけではない。
昔から存在していたデビットカードにクレジット会社が関わることになったことでどうなったか?
こうなった。
世界中どこでも買い物ができるようになった。クレジットカードが使える店なら世界中どこでも利用可能だ。
買った瞬間に口座から引かれる。アメリカで100ドルの買い物をしたとき、1ドル111円で、手数料が100円かかったとすると、買い物をした瞬間に11200円が口座から引かれる。
クレジット会社の持つ調査機能がそのまま保険となる。不正利用をされた場合、使われた金額が戻るし、不正の疑いがあったら本人に照会が来る。
そして、銀行の預金通帳は、いつ、どんな理由で出金したかが記録されるようになった。もっとも、今のところはまだ「カイモノ」とか「テスウリョウ」とかの大雑把なもので、「さば味噌煮定食 540円 出金」とまではいかないが。
このどこにも現金は登場していない。登場しているのはデビットカードだけだ。
ただし、それでもデビットカードを取り出して使うという点は残っている。つまり、財布、あるいは財布に相当するものは必要としている。スマートフォンを読み込ませることもあるが、それでもスマートフォンをカバンなりポケットなりから取り出すというワンクッションは必要となる。
これがさらに一歩進むとどうなるだろうか?
私は、指紋や静脈認証などが支払いのキーになる時代が来るのではないかと考えている。カードを出すのではなく、手のひらをかざすだけで支払いが完了し、その瞬間に口座から引かれるという時代になると考えている。
電子マネーへのチャージではなく、支払いをするたびに商店からクレジット会社を経由して銀行に情報が送られ、銀行に金銭の支払いの詳細な記録が蓄積されていくのではないかと考えている。
利用者にとっては便利になると同時に、安全も手にすることとなる。財布を盗まれたり、電子マネーを盗まれたりという事件は残念ながら存在するし、恐喝されるという事件も存在する。だが、自分の手のひらだったらどうなるか?
買い物が監視される時代は不気味と言えば不気味だ。それに、自分のこれまでの買い物の姿が情報として第三者に蓄積されてしまうことの危惧も理解できる。
それでも考えなければならないことがある。それは、時代が既にそのように動き始めているということ。これまで通りの現金決済も、国によっては一定額以上の売買については現金決済を禁止するようになってきている。決済はクレジットや小切手など決済の記録の残る方法でしか認められなくなってきているのだ。もっとも、そこには税の補足という考えも見え隠れしているし、地下経済を干上がらせるという目的も存在しているが。
現金決済に上限を設けている国の例
- ベルギー 3,000ユーロ
- フランス 1,000ユーロ(ただし、非居住者は15,000ユーロまで可)
- スペイン 2,500ユーロ(ただし、非居住者は15,000ユーロまで可)
- ギリシャ 1,500ユーロ
- イタリア 1,000ユーロ
さらに、インドでは高額紙幣を廃止するという思い切った方法で現金決済を減らすという思い切った方法をとった。
日本でももし、これらの国のように高額紙幣を廃止し、一定額以上の取引は現金の使用を禁止するとしたらどうなるか?
このあたりのことは、後日、まとめて。